ロシア激動の歴史に浸る!古都サンクトペテルブルグ四大教会めぐり

ロシア激動の歴史に浸る!古都サンクトペテルブルグ四大教会めぐり

更新日:2016/01/07 18:03

菊池 模糊のプロフィール写真 菊池 模糊 旅ライター、旅ブロガー、写真家
ロシアの古都サンクトペテルブルクには、ロシア正教の美しい教会がたくさんあります。
特に、聖イサク大聖堂、カザン聖堂、血の上の救世主教会、トロイツキー大聖堂の四大教会は、旧市街の中心部にあり、「サンクトペテルブルク歴史地区と関連建造物群」として世界遺産に指定されています。
いずれも健脚の方なら徒歩圏内にある素晴らしい教会で、ロシア激動の歴史を実感できますので、ぜひ訪問してみましょう。

聖イサク大聖堂(聖イサアク寺院)

聖イサク大聖堂(聖イサアク寺院)

写真:菊池 模糊

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サンクトペテルブルグのメインストリートのネフスキー大通りがはじまる旧海軍省から徒歩5分のところに、巨大な聖イサク大聖堂がそびえています。
これは高さ102m、面積が800平方mを誇る世界最大級の教会で、圧倒的な存在感があります。
中央に巨大なドームがあり、四方に小ドームを配し、上から見ると十字になるロシア・ビザンチン建築様式で、聖堂を取り囲む柱廊に立つ48本の大きな円柱が非常に印象的です。この円柱は一本114トンもあるそうです。

ピョートル大帝の守護聖人であるダルマチアの聖イサクの名を冠したこの聖堂は、何度か改築されましたが、現在の建物は、アレクサンドル1世の時代に、フランス人建築家モンフェランの設計により建築されました。ネヴァ川に近い低湿地に巨大な聖堂を造ろうとしたため、工事は難航し、40年もの歳月を費やし、1858年に完成しました

非常に整った外観でシンプルかつ重厚感があります。エルミタージュ美術館のある宮殿広場や、ピョートル大帝の青銅の騎士像のある元老院広場からも綺麗に見ることができますが、一番迫力のあるのは、聖堂南側にある聖イサクスクエアから見る景観です(写真参照)。
バランスが良い建築物なので、遠くから見ると大きく感じませんが、近づくとどんどん大きくなるという興味深い大聖堂です。
サンクトペテルブルグの教会建物としては最も重要なもので、必見の観光スポットといえるでしょう。

聖イサク大聖堂内部

聖イサク大聖堂内部

写真:菊池 模糊

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聖イサク大聖堂は、ソ連時代には反宗教博物館として利用されたこともありますが、現在はロシア正教の記念博物館として有料で一般公開されています。
内部に入場すると、その圧倒的な大きさに驚かされます。
圧巻は中央大ドームで、102mの高さの内部空間を仰ぎ見ることができます。
このドーム天井は空から光を取り入れる構造になっており、上部中心には鳩の形が見えます(写真参照)。
この空間にいわば日本の通天閣がすっぽり収まるわけで、その巨大さが分かります。

聖堂内部にはロシア正教らしいさまざまなイコンなどが見られます。
東正面にキリストの復活を描いた大きなステンドグラスがあります。ロシア正教の寺院では珍しいものといえるでしょう。この両側には、ピョートル大帝、エカテリーナ2世、アレクサンドル1世、聖ネフスキー、聖母子、聖パウロ、聖イサクなどの絵が飾られています。
各小ドームにもそれぞれ宗教関係のモザイク画などがあり、細かい彫りものによって覆われた門扉や、色大理石・孔雀石などで装飾された柱や床も見事です。寺院の構造模型も展示されており、いわば見所いっぱいの博物館的な大教会といえるでしょう。

さらに、入場料とは別に特別料金を払えば、中央ドームの展望デッキに登ることができます。狭い石段で注意を要しますが、サンクトペテルブルグを見渡せる絶景を楽しめます。体力と時間に余裕がある場合は挑戦してみてください。

なお、ロシア正教では立像はほとんど見られず、平面的な聖画像であるイコンが中心となります。これは初期キリスト教の偶像禁止の流れに基づき、立体的な像が避けられてきた歴史によります。イコンは、板絵、フレスコ画、写本挿絵、モザイク画などで描かれ、教会の内部を飾っています。これが正教会内部を見学するとき頭に入れておくべき肝要な点です。

カザン聖堂

カザン聖堂

写真:菊池 模糊

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ネフスキー大通りに面してあるのが、現在、サンクトペテルブルクのロシア正教会の首座教会であるカザン聖堂です。
ロシア正教会において重要なイコンである「カザンの生神女」が祀られた教会で、多くのロシア正教の信者が訪れる場所です。入場は無料。
聖イサク大聖堂や血の上の救世主教会のような博物館的なものではなく、現在も生きている市民の教会といえるでしょう。

カザン聖堂は、ヴォロニーヒンの設計により、10年がかりで1811年に完成しました。完成翌年には、ナポレオン戦争(ロシアでいう祖国戦争)勝利を記念するものとされました。後に祖国戦争の英雄クトゥーゾフ将軍の遺体が安置され青銅像も建造されています。
この教会もソ連時代には無神論博物館とされましたが、1996年にロシア正教会に返還されました。

この教会の外観の特徴は、主建物の両側に半円状に弧を描くコリント式列柱の回廊です。いわばローマのサンピエトロ寺院を彷彿とさせるもので、ロシアでは珍しい様式です。これにはロシア正教会側ではなく建築当初の皇帝であるパーヴェル1世の意向が反映されたのではないかと言われています。

中に入ると荘厳な雰囲気で、何より奥正面のカザンの生神女のイコンが印象的で、敬虔な信者が頭を垂れて祈っています。
写真撮影は禁止で、生神女のイコンの一角はロシア正教の信者のみが入れますので、観光客は遠くから見守る形になります。いかにロシア正教徒がイコンを大切にしているかが分かる教会といえるでしょう。

血の上の救世主教会

血の上の救世主教会

写真:菊池 模糊

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血の上の救世主教会は、公式にはハリストス復活大聖堂といい、カザン聖堂の東北側500mにあります。ここは、1881年にロシア皇帝アレクサンドル2世がテロリストにより暗殺された場所で、その弔いのために建てられたところから一般的に「血の上の救世主教会」あるいは「血の上の教会」と呼ばれています。

この教会は、サンクトペテルブルグの他の教会と異なり、ロシアの民族性を意識した玉ねぎ形の屋根に見られる中世ロシア的な造形が特徴です(写真参照)。
外観はゴテゴテ感はありますが、格別に印象的で、一度見たら忘れられません。一見すると、モスクワの聖ワシリイ大聖堂に似ていると感じます。
ヨーロッパへの窓として西欧を指向してきたサンクトペテルブルグにおいてはまず見られない建築様式で、非常にユニークなものとなっています。

ここで暗殺されたアレクサンドル2世の後を継いだアレクサンドル3世によって建設が開始されましたが、完成したのはその次のニコライ2世の治世で、建築開始より13年目の1907年になります。
完成後の10年目にロシア革命がおこり、ソ連時代には野菜倉庫として使われたことから、ジャガイモの上の教会と揶揄されたこともありました。その後、長い修復期間を経て、現在はモザイク博物館として有料で一般公開されています。

内部は一面モザイク画によって覆い尽くされています。これはロシア王家にとって皇帝暗殺という悲劇を弔うために、聖書の中から悲劇的なエピソードを選んで描かせたことによります。ロシア正教の厳密なイコンの様式に基づいて表現されているそうで、圧倒される雰囲気があります。

この教会は、皇帝暗殺から、末期のロシア帝政、ロシア革命、ソ連時代、ロシア共和国という激動の歴史の中の出来事を実感できる類まれな存在と言えるでしょう。忘れずに観光してください。

トロイツキー大聖堂

トロイツキー大聖堂

写真:菊池 模糊

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トロイツキー大聖堂は木造の教会建物として世界最大級のものです。
フォンタンカ川の南のトロイツキー通りにあり、聖イサク大聖堂やカザン聖堂からは少し離れていますが、健脚の方なら十分に徒歩圏内にあります。

写真のように星が散りばめられた青い巨大ドームがとても綺麗な教会です。
トロイツキーとは、トロイカ(3頭立て馬車)という言葉があるように三を意味し、トロイツキー大聖堂とは正教会で「至聖三者大聖堂」と訳されます。カトリックでいうところの三位一体大聖堂にあたり、ロシアにはトロイツキーという名の教会がたくさんあります。

サンクトペテルブルグのトロイツキー大聖堂は、1835年に建築家スターソフによって建てられたもので、上から見ると十字型の帝政ロシア様式で中央ドームの高さは80mもあります。聖イサク大聖堂よりは小規模ですが、麗しい青いドームは街に溶け込み、朝日夕日に輝く偉容を誇ります。
なお、内部観覧は無料ですが、写真撮影は禁止です。

この美しい教会は、2006年に火事で高さ80mを誇る中央ドーム屋根を焼失しました。
現在は修復され、その特徴的な青いドームを再び見ることができるようになりました。
隣接して、露土戦争の記念碑として建てられた勝利の女神ニケの像があり、これも見逃せません。

その他

サンクトペテルブルグには以上の四大教会以外にも、たくさんの見るべき教会や修道院があります。
ネフスキー大通りの終端にある巨大なアレクサンドル・ネフスキー大修道院、エカテリーナ2世が女子教育の場として創設した美しいスモリヌィ修道院、ネヴァ川を挟んでエルミタージュ美術館の向かい側にそびえるペトロパヴロフスキー大聖堂、5つのドームがあるウラジーミルの生神女大聖堂などです。
いずれも十分に見る価値のある場所ですが、少し遠いので、地下鉄やバスなどの交通機関を利用して訪問してください。

ロシア正教の教会は、どれもエキゾチックな雰囲気あふれる宗教建築です。外観や内部も個性的で期待を裏切りません。
サンクトペテルブルグに来たら、まずはエルミタージュ美術館となりますが、それだけでなく、ぜひ上にあげた教会を観光してみてください。とても良い思い出となるでしょう。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/10/21−2015/11/23 訪問

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